今日は予告通り、鹿嶋の彼が会いに来てくれた。
丁度、ベビーを抱っこしてお散歩中で家に帰る途中に携帯が
鳴って
「もう着いちゃったんだけど、何処?」って。

「今ベビーちゃんと散歩中で、家に帰る途中だよ」

「じゃあ、そこで待ってて。今からそっちに行くから」

(・・・えっ!? 今日はすぐ帰っちゃうのかな?)
今日は家に帰って、引越しの為の荷物整理なんかがあるから、
あまり時間がないとは言っていたけれど・・・。

暫くして彼が車で来た。家まで2、3分の距離なのに。
車から出てきた彼は白い箱を持っていて

「はいこれ・・・ホワイトデーのお返し。ちょっと早いけど」

ケーキを買ってきてくれた。

「ありがとう」

と言って受け取ると彼は

「買い物って、何処まで行くの? どうせなら途中まで乗せて
行くよ」

って言ってくれた。

あたしは家に帰って、ベビーを置いて(母に頼んで)また車に戻った。 買い物に行く途中の駅に降ろしてもらう事にした。

車に乗ると、彼は手を握ってくれた。 
突然の行動に驚かされる。
あたしはじっとしていた。
この手の暖かさも遠い所に行っちゃうんだな…。
またちょっと悲しくなる。
お互いに良く喋っていたと思う。
きっと、話が途切れると淋しくなっちゃうから。
あたしはまともに顔が見れなかった。

駅が見えてきて

「じゃあ、そこの手前で降りるからUターンして帰って」
って言うと

「平気だよ。そこを右折してUターンするから」

駅を通り過ぎて、広い駐車場に入っていった。
車を止めて彼は

「まだ早いし、30分くらいお話しようよ」
煙草に火をつけて、サンルーフを少しあけながら言った。

名古屋に行ってからの話。
かりんにどうやったら会いにこれるかなって話や、前みたいに
頻繁には会えないけれど、全く会えない訳じゃないから色々
考えておくからねって話。

4月からはとりあえず一人で行くらしい。
奥さんの仕事の事や、子供の学校の事、今のマンションのローンがあったり借り手が見つからないとダメと言う事など、問題が
いくつかあるので、家族は3ヵ月後に行くのか半年になるのか…一年後になるのか…または来ないのか、どうなるのか分からないらしい。 奥さんは淋しくないのかな・・・。

30分はあっという間だった…ような気がした。
楽しい時間は早く感じる。

「ありがとう。それじゃ、気をつけて帰ってね!」
車を降りようとすると、グイッって腕をつかまれてキスをした。
正面に守衛さんみたいな人がいるのに・・・。
まだ明るい時間のキスは、ちょっと恥ずかしかったけど、嬉しかった。

そこから歩いて駅に行こうとしたのだけど、彼は近くまで行ってくれて、そこでバイバイした。
車から降りて、彼の車が見えなくなるまで見送って駅に向かった。

少しの時間だったけれど、幸せな時間だった。
チョコのお返しは、甘いケーキと優しい微笑みと
・・・温かいキスでした。


 

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